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Artholic Freepaper - book review: 6月 2009
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More Stories on Book Review. 12302;モナリザの秘密—絵画を巡る25章』. 今回のブックレビューは、名古屋大学大学院で美術史を学ぶ吉田映子さんに「美術史学を学ぶ人にお勧めの一冊」を紹介していただきました。 12302;モナリザの秘密—絵画を巡る25章』. ダニエル・アラス 吉田典子(訳) 白水社. 多くの絵画を見ることや一枚の絵をじっくりと時間をかけて見ることは絵画研究の第一歩です。けれど、美術史学の領域に片足を踏み入れたばかりの私は、時に、絵画の多様さに圧倒されてしまったり、反対に、もう何もかもが言い尽くされてしまって新しい魅力を発見することなど到底不可能だ、なんて思ってしまうことがあります。そんな時にはアラスの文章が良い薬です。 アラスの眼差しが捉えた絵画内部から「呼ぶ」声は、読み進むにつれて、他の細部や画面全体、著者の博識、様々なテキストや時代背景と、まるでパズルのピースのようにあるべき場所へとはまりつつ互いに結びつき、新しい魅力を提示します。 Artholic freepaper.blog(展覧会情報など). BOOK Review - Archive.
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Artholic Freepaper - review: 9月 2008
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名古屋市民芸術祭2006・美術部門企画展「next station―次の美術駅へ」での展示から、ちょうど2年ぶりとなる吉本作次の個展。 会場1階に展示されたのは、いかにも彼らしいベージュを基調とした油彩の作品群。まずは、画面のほぼ中央に描かれた漫画風の人物が織りなす出来事に「く すっ」とさせられる。しかし、見る者の視線はそこに留まることなく、その周囲に描かれた樹木や崖、雲や煙に引きこまれていく。 木々の茂みや断崖を形づくる小刻みに曲がりくねった線や、雲や煙を構成する大胆にうねる線。それらを目でたどるように見ていると次第に幻惑され、バロック様式の彫刻の衣の襞を見入るうちに、視線が襞の奥へと吸い込まれていくのに似た感覚を覚えた。 一方、2階には荒々しいストロークを駆使した作品群が並べられた。うねるような曲線が繰り返される点は共通しているが、1階の作品群が細くて硬い選び抜か れた線で描かれているのに対し、こちらは太く即興性のある線で描かれている。それらの線を目で追うと作家の大胆な手の. Design, modified by 小黒/KOKURO.
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Artholic Freepaper - review: 6月 2010
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昨年の夏にデンマークのレミゼンでの滞在制作を経験した平田あすか。これまでのメキシコ、スペイン、ケニアでの滞在制作後の作品には、その土地の風景や歴史から着想した物語やモチーフが登場し、レジデンスの成果がうかがえたが、今回はいままでにない 2. まず驚かされたのは、脱色したベルベットに刺しゅう、あるいは和紙に色鉛筆でドローイングという手法により一貫して制作してきた平田が、立体やペインティングに挑戦していた点だ。キャンバスにアクリル絵具と色鉛筆で描かれたペインティングについては、まだ模索中という感が否めなかったが、木や 粘土. によって立体化された見覚えのあるモチーフは、平面作品とは違った魅力を放っていた。たとえば、《魚の夢》の青い魚の口から顔を出している人物の姿は布や和紙の作品でもしばしば見られるが、木彫になったことで平面の時よりもぷっくりとしてはちきれんばかりであり、着ぐるみのように魚を着ている、もしくは寝袋のように魚の中に入っている感じが、より強く伝わってきた。 写真/平田あすか《魚の夢》. Design, modified by 小黒/KOKURO.
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Artholic Freepaper - review: 9月 2011
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平川祐樹展~微かな予兆~Slight signs of something. 12300;世界を奏でる『音』の断片」. 12300;Youki Hirakawa/Slight Signs of Something,2011,Installation View」. 展示室内。照明を落とした暗い空間の中、四方の壁面に掛けられた複数のモニタから流れる映像と、音。それらが短いタームで繰り返されている。 カサカサと音を立てて風に揺れるビニールのテクスチャ。水面に滴を落とし降り続く雨の波紋。夜、ただ何かを掘り続ける男のシルエット。そして青白い光の中、浮かび上がる誰かの手・・・。どこかで見たことのあるような、それでいて見知らぬような。ある風景の全体というよりは、その中の一部分を拡大して捉えたものが多いという印象だ。 主題の無い旋律、見えないその姿を予感させる広がりを、心のざわめきが微かに捉えている。 物語無き物語に、私たちは自身の生きる世界を紡ぎ出す。作品を通して、自分自身の内なるスクリーンに映るものと、静かに向き合ってみたくなった。 Design, modified by 小黒/KOKURO.
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Artholic Freepaper - review: 3月 2012
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トザキケイコ展「それは満ちてくる うつろな光」. 12299; 石・枯草・米・陶・蜜ろう・アンティークガラス、2011年. 展覧会ごとにギャラリーの雰囲気が変わるのは当然といえば当然だが、今回は少々意外だった。というのは、このギャラリーには大きな窓があるため、そこから入る自然光や窓の外の空間を活かした展示が多いのだが、今回は窓がすべて塞がれていたのだ。自然光を遮断したほの暗い空間に、小ぶりのガラスビンやシャーレが照度を落としたスポットライトに照らされて浮かび上がるさまに、私はヨーロッパの古い教会の中に足を踏み入れたかのような錯覚に陥った。それは、窓の位置に背を向けるようにして年代物の戸棚が置かれていたこととも無関係ではない。塞がれた窓の隙間からわずかに漏れる外光の効果によって、戸棚が微かな光に包まれて祭壇のように見えたのだ。 トザキケイコ展「それは満ちてくる うつろな光」. Design, modified by 小黒/KOKURO.
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Artholic Freepaper - review: 12月 2012
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松村かおり 文谷有佳里 「描き流し」. 鉛筆やペンによる精緻なドローイングで知られる文谷有佳里と、色彩豊かな木版画を手がける松村かおりの二人展。まったく異なる作風の 2. 私が会場を訪れた時にはすっかり日が落ちていたが、敷地内に入った瞬間、玄関のガラス戸から垣間見える内部の様子に違和感を覚えないではいられなかった。煌々と照らされた室内に、黒いなにかがまとまりついているかのように見えたからだ。 そう見えたのは、扉に黒い流麗な線が描かれていたからだった。中に入ると窓や扉のガラ ス. のほとんどすべてが黒マジックによる線で埋め尽くされており、それらはまるで細胞のように増殖し、建物全体を覆い尽くそうとしているようだった。 一方、松村かおりも会場に滞在して、 3. 下絵を描き、それを版に写し、版から紙に写すという制作過程を経ることにより、版画には作品とつくり手の間にペイン テ. 月に行われたコンサート「オセロ vol.2. 12301;でのパフォーマンスで、 2. 松村かおり 文谷有佳里 「描き流し」. Design, modified by 小黒/KOKURO.
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Artholic Freepaper - review: 12月 2008
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名古屋市市政資料館 第1~5展示室 2008年9月26日~10月12日. 包装紙や紙袋の切れ端などにささやかな身の回りの事物を描く浅田泰子と、Institute of Intimate Museum(「親密な美術館」の意)という架空の美術館を展開しながら、見る・見られるという関係性や見ている対象と見えている事象のズレを視覚化して きた杉山健司による二人展。 展覧会の導入となるのは、浅田による架空の旅の物語。まったくのフィクションかと思いきや、手書きの原稿の周囲には、彼女が旅行の途中で手に入れた物の写真や切符などが展示されており、事実とつながっているところが彼女らしい。 一方、空間に張らされた糸にぶら下がっていたのは、買った品物が描かれたレシートや旅行の思 い出が描かれた観光名所のポストカード。空間に広がる糸はマスクの奥から投げかけられる視線のようであり、そこに小さな絵が連綿と連なるさまは、私たちが さまざまな対象を見て、その積み重ねが脳内にイメージを描きだすという双方向の作用を想起させた。 Design, modified by 小黒/KOKURO.
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Artholic Freepaper - review: 3月 2010
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12288;215×212cmの大画面に、8人の女性が配された浴室が描かれた《BATH,R》。見ているうちに目が回るような感覚を覚えないではいられないのは、絵の中の空間が複数のパースペクティブな奥行きの連鎖により成立しており、その結果、歪みが生じているからだ。濡れたタイルや流れる水に人物が映ってできる鏡像は、見る者をさらに幻惑させる。 12288;描かれているモチーフから、河原温の〈浴室〉シリーズを思い浮かべる人もいるだろうが、坂本夏子は現代人が抱える不安感や閉塞感を表現しようとしているのではない。自らが目指す絵画のために、浴室という誰にとっても身近な空間を借りているにすぎないと、私には思える。 写真:《BATH,R》. 油彩・カンバス、215.0×212.0cm、2009~2010年. Design, modified by 小黒/KOKURO.